ヒーリングの記録

『左半身麻痺の40歳女性へのヒーリング』 2.病気は、教師のような存在である

8.病気の治療に対する大切な考え方

「ヨガは、生命力を上げます」

ミツさんがYさんに勧めたのは、特にヨガの呼吸法でした。病気や痛みを100%改善するミツさんは、それでもヒーリングを万能なものだとは思っていません。

以前、ある方に「治療は、総合格闘技です」と言ったように、ただヒーリングだけ受けて治るものではない。あくまでも、治療というのは総合的に取り組むもの。その中でも、下記の3つは重要です。

「ヨガ」が可能とする身体開発とリラックス、「食事」「水」が与える身体機能の改善と浄化、「睡眠」がもたらす身体全般の再構築。

その話をして、ある30年来のリウマチを持った方が劇的に改善した話を例に伝えました。

「絶対に、諦めないことです」

繰り返しそう言いながら、Yさんの目を見て何度も語りかけたんです。また、ミツさんが透視して見て、いくつか現在の状況について伝えていました。

「呼吸があまり整っていませんね。でも、生まれ持った精神の美しさがあります。気持ちが明るいと、改善しやすいんですよ」

その方は、特に心が美しい方でした。一見パッと見て優しさがあるのは、実はハートチャクラのエネルギーの回転から来ます。

おそらく、生まれ持ったその心があり、通常では考えられない困難にも苦しみながらも笑顔で乗り越えて来た、そんな15年間だったのではないでしょうか。

9.ヒーラーでさえも不思議なヒーリング現象

それから、ミツさんはヒーリング現象について

なぜ治るのか?実は僕にも分からないんです。でも、身体の周りにある身体(オーラ)が改善していくと、身体も改善していくんです。それを見ているので、治るのが分かります」

そう言っていました。「ミツさんが分からないわけない」と思う僕ですが、ミツさんは誰にも抵抗がないように、時にはそう伝えます。

しかし、実際はウソでも何でもなく、「分かるけど、分からない」。それくらい、不思議な現象でもあるんです。

それからいよいよ、ミツさんはヒーリングをはじめました。まずは、グラウンディング。これは、地球とのコンセントをつなぐ役割があり、つまり「地球の力を借りる」行為です。

実際にミツさんがYさんの足首を持ち、「3分ほどやりますね」と言って、はじまりました。そして、同席したお母様にも一緒にいる方にも、「一緒に、目を閉じてください」とそう促して、30分近くに及ぶ静かな時間がスタートしたのでした。

ヒーリング中は、まわりにいる全員も沈黙に沈みます。「沈黙」と言ったのは、ヒーラーであるミツさん以外がただ目を閉じるだけではなく眠りに落ちるからです。どうやらヒーリング効果は空間全体に影響しているようなんですね。

「3分」と言ったグラウンディングは実際には15分ほど続きました。それが終わってから、Yさんのそばに立ち両手で頭に手をかざしながら、顔の前、背中の首当たり、いくつか場所も変えながら手を動かしていました。だいたい、15分くらいでしょうか。

最後にもう一度グラウンディングをし、その後僕の方を振り返って小声で言いました。「お水を持って来てもらえるかな?」。これは、ヒーリング終了の合図でもあります。

身体の再生には水が必要になり、逆には再生がはじまるので水が欲しくなります。以前、てんかんをもった男性のヒーリングをしたとき、終わってからその場でコップの水を5杯くらい飲んでいて同席した母親も驚いていたことがあります。

Yさんは特に「水が欲しい」とは言いませんでしたが、グラウンディングでミツさんが見えたのは、地球とのつながりが薄くその状態では病気の改善が難しかったようです。

僕が注いだコップ1杯の水を飲んでもらい、それから少し説明をして「では、最後に実際に歩いてみてください」と、ミツさんは言いました。

この後、まさに目の前でYさんは奇跡的な症状改善を見せることになります。

10.ヒーリングによって神経が再生した

ミツさんに促されて、歩きはじめるYさん。

映像を見比べてみると、微妙に歩くスピードがあがっていました。また、歩くその足取りは少ししっかりしているようにも。杖をついていたときより、そして杖なしで歩いていたときより、たしかに足取りはしっかりしていたのです。

しかし、驚いたのは次です。

「では、手を上げてみてください」

ミツさんがそう言って、90度まで上がらなかった左手が…

「えっ?全然違う!!!」

Yさんの左手は明らかに、高く上がっていました。90度を超えて、150度くらいまで左手が、上がったのです。あまり驚いた様子もなくYさんは、大きな目をキラキラさせながら言いました。

「全然、抵抗なく上がります…!」

何度か上げ下げしていると、数回目で手が180度近くまで上がり、確かめるように自分の左手を見ていました。

すると、それまで後ろから無言で見守っていたお母様も「え…? 凄い!」と言って身を乗り出してきたのです。

ミツさんが「こんなに上がらなかったの、分かりますか?」と言うと、「そうなんですか…」と、Yさんはすでに以前までのことを忘れていたようです。

それでも、「でも、重くないのは確かにあります」と言い、左手の違和感がなくなっていることは気づいたようなんですね。

次にミツさんが「握手してください」と言って、Yさんの左手と握手。すると、僕から見ても強く握ることしかできなかった麻痺した左手が、力が抜けているのが分かりました。握手したまま腕をわざと大きく上下に振ると、Yさんの左手は波を打つように揺れたのです。

また、左手を曲げてみては少々ぎこちなさはあるものの、スムーズに曲がるようになり、コントロールも利くようになっていました。さらには、指も力みがなくなっているよう。静かにミツさんは言いました。

「これは、神経の再生です」

それに応えるように、Yさん。

「まるで右手でやっているようです」「夢のような…こんなことあるんですね!」

そんな話をしていると、「たった一度で…」と驚いたお母様がYさんのそばへ駆けつけました。すでに柔らかくなったYさんの左手を握り締め、「あらあらあら…」と手で口を押さえ、改めて驚いた表情をしていました。

その言葉には、僕たちではまったく予想もできない2人の長かった時間と、それに貼り付いた苦労が実感としてこもっていたのが分かりました。それを察したように、ミツさんは言いました。

「これまで、大変だったんじゃないですか?」

すると、Yさんは笑顔のままで「本当に、まさかという感じです」と答えました。すでに、少し過去を忘れていたYさん。新しい人生がはじまると、過去の辛いことを徐々に忘れていくように、ヒーリングによって病気が改善したYさんは、すでに過去の自分を忘れていました。

11.未来のYさんからのメッセージ

これは「リアリティシフト」と言いますが、確かに改善した証拠でもあるのです。

「これから、さらによくなっていきますよ。治ったら、新しい人生が始まります。よかったですね」

そう言ったミツさんは、周囲の興奮をよそにいつも通りの落ち着いた様子でした。

1回のヒーリングによって劇的に症状が改善したYさん。お母様とともに喜んでいると、ミツさんはメッセージを届けました。未来のYさんからのメッセージ。

Yさんは髪を短くしているのですが、ミツさんが見た完治した未来ではロングヘアだそうです。ミツさんはそれを「気持ちが上がったのでは」と言っていましたが、病気が治って健康を取り戻したYさんは、「ファッションもおしゃれしたくなる」のだそう。

それで、髪もロングにし、自分の好きなおしゃれもし、楽しそうに歩いている映像をガイドが見せてきたのだそうです。「髪をいじるのが好きみたいで」とミツさんが言うと、笑顔でお母様と目を合わせたYさんは、何かを思い出しそうにも見えました。

おそらく、病気になる前は髪が長かったかもしれませんし、髪をいじる癖があったのかもしれませんが、それは聞かなかったです。ただ、笑顔で聞いていたのは心が何かに気付いたのかもしれません。

とにかく、笑顔でした。ヒーリングによって未来へのレールが大きく切り替えられたYさん。近い未来で、必ず、ロングヘアのYさんに会える気がして僕も、胸が熱くなった感覚を、まだ、覚えています。

12.病気とは、何か?

Yさんとお母様と、同行して案内してくれた方は何度も笑顔で「ありがとうございました」と帰っていきました。

僕が見てきたヒーリング現場では、毎回その場での病気や痛みの改善があります。これを「奇跡」と呼ぶこともできますが、そんなに奇跡は何度も起きるのか?という疑問も、湧きます。

僕が思うに「ヒーリング」とは、自然界にある摂理のようなもので、ただ意味しているのは人間の果てしない可能性の示唆ではないかということです。

一方で、それを知るには「病気」という状態があってはじめて理解される能力でもある。この世界に「病気」と「ヒーリング」が反対概念として存在し、まずは病気の在り方を表現して、それからヒーリングが必要となる。

大局から、また大きな時間で考えるとゼロの状態から、マイナスとプラスをつくってそしてまた、ゼロに戻る。意味がないように見える行為ですが、それでも感情や感動を貼りつけて意味を持たせるのも、人間です。

さらに、病気になってそれが治ったとき、人は「次は、絶対に楽しく生きたい」と思うとしたら、それは病気による恩恵を受けたということにもなります。

同時に、ヒーリングという奇跡のような現象を知ることにもなるのなら、その存在を知らなかった人生と果たしてどちらが自己の成長につながるのか? もちろん、答えがない問いですが、十分質問になりうる問いでもあると思うのです。

誰も、病気になりたくありません。しかし、ある意味ではこう言える部分もあるのではないでしょうか?

「病気は、教師のような存在」だということ。「人間存在の果てしない可能性」「人生について、考察する時間を与える」「人生の決断の必要性」「生き方、考え方、働き方など、変革の必要性」「今、好きなことをするという瞬間の大切さ」

病気によって多くのことを学び、人生哲学を構築する方も、少なくありません。そして、そういう方が口々に言うのは

「あの病気があったおかげで…」「もし、あの病気にかかってなかったら…」

それは、後悔でも悲哀でも何でもなく、まるで教師のように「教わった」というようなんです。それを見るたびに僕たちは、考えさせられるわけですね。

「病気とは、何か?」

病気とは、何か? それにはいろいろな解釈があると思うのですが、その質問がすでに意味していることは、人間に深い洞察をもたらすきっかけであるということは明らかだということなのです。

前里光秀研究所が取り組むヒーリングは、その答えを探すひとつのプロセスなのかもしれません。

 

前里光秀研究所 和田一真