ヒーリングの記録

『左半身麻痺の40歳女性へのヒーリング』 1.25歳のとき、突然Yさんを襲った脳梗塞

1.25歳のとき、突然Yさんを襲った脳梗塞

陽射し柔らかいある日の午後、その女性はお母様と親戚の方と一緒に東京本社へ来ました。目が大きくてニコッとした笑顔、ショートカットの髪はとても似合っていました。

僕が「はじめまして」と挨拶するとその女性は、「はじめまして」と笑顔で会釈も。思ったより表情が柔らかかったのは安心しましたが、その女性のたどたどしい歩きにまわりも「今か、今か」と手を差し伸べようと座る席まで案内するのにも目線は足元から離せませんでした。

40歳の女性、仮にYさんとします。実はその方の左手にはステッキが握られ、一見して健常者ではないことはすぐに分かりました。

とってもかわいらしいYさん。今から15年前、25歳のときに『もやもや病』により出血。これは何らかの原因で、脳の血管が閉塞して起こす血流不足が招く病気です。

その10日後に、今度は『脳梗塞』を起こし、左半身麻痺となりました。そしてさらに、それが原因となって『高次脳機能障害』を発症。Yさんは、立て続けに自由を奪われていったのです。

高次脳機能障害は、脳梗塞や脳内出血などが原因となって起きる記憶障害、注意障害、行動障害など普通の生活が難しくなる障害です。

しかし、身体障害が軽症なことが多く、外見として目立ちにくいこともあって、しばしば『みえない障害』と呼ばれるそうです。

2.高次脳機能障害がもたらした不自由な生活

今回、東京本社に来るにも、Yさんがご家族同伴で来ました。実はそれは、自分自身で地図を読んで目的地までたどり着くことができなかったから。

また、ゆっくりではありながらしっかりと話すのですが、本当は大変。人の顔と名前を覚えるのが困難で、覚えてもすぐに忘れてしまうそう。だから、やるべきことや大事なことは会話ではなく紙にしてもらうそうです。

さらに、注意障害に加えて左半身麻痺は左目の認識・認知も落とすのか、視界は見えてはいるのに左側だけ壁にぶつけてしまったり、物につまずいたり。時には転倒することもあって、とても痛い思いをしていました。

「左側はあざができるので…」

そう少し控えめな声で言った表情は、笑顔もありながら「困ったな…」という程度の優しい表情でした。困難を抱えた生活にも関わらず、笑顔でいるYさんにこちらまでその大変さを忘れるほどでした。

また、服を着るのが大変だそうで、左手がどこに入るのか?を憶えられない。麻痺があり不自由な左手に、脳の指令もままならないYさんは、さらに通常の生活が困難となっていました。

日常で、私たちが無意識のうちにできるような動作も、多くがYさんにとっては困難です。その生活を15年続けてきたYさんの苦労を考えると、またその中で奪われた「時間」「自由」「笑顔」「25歳らしい生活」「30歳らしい生活」「同年代らしい生活」を考えると、想像を絶する苦労があったとほんの少しですが、分かったのです。

3.「左手の自由を取り戻したい」

病院でもらった薬を服用してもこれらが改善することがありません。その中で「少しでも希望があるなら」と奇跡を信じて私たちのもとへ来たYさん。

「一番の希望は、左手の自由を取り戻すこと」

前もって行われた事前ヒアリングでそう言っていたYさん。今回のヒーリングで、衝撃の改善を見せることになったのです。

僕が談笑を含め少々のヒアリングを終えると、作務衣を来たミツさんが部屋に入ってきました。「こんにちは。前里です」。そう静かに言ったミツさんに、Yさんも笑顔で挨拶を返しました。

それから、はじまりました。これは、実際に僕の目の前で起きた出来事。ミツさんのヒーリングによって15年来の不自由が劇的に改善した話。そのときの衝撃は、今もリアルに残っています。

4.ヒーラーとYさんの対面

ミツさんが部屋に入ると、一気に空気の流れが変わります。物腰柔らかいミツさんですが、凛とした意識が立っているのかなぜか固唾を飲んで動きを見てしまうんです。

膝をついてYさんの前に座ったミツさん。言葉とともに安心を投げかけるように、しかしはっきりとした声でYさんに話し始めました。

Yさんの麻痺した左半身の左手は、力強く握りしめたまま緊張がとれません。手を開こうとしてもガチガチになって震えが止まらず、左手を曲げようとすると、加減が分からず胸を叩いてしまってもいました。

また、手のバンザイも右手は90度上がり、左手も同じくらい。「もっと上がらないですか?」と促してやっと90度超えるのが限界でした。杖なしで歩いてみては、膝が上がらないので今にでも躓くかというほどで、Yさん自身も注意しながら歩いているのはすぐに分かりました。

5.ヒーリングで「過去を忘れる」

この事前の確認が何のために行われるのか?それには、4つ理由があります。

まずひとつ目。ヒーリングで病気や症状が改善した場合、本人が「過去を忘れる」ということが頻繁に起こります。正確には、「うまく思い出せない」のですが、ほとんどの場合、「あれっ?動かなかったっけ」と言うので、それは一瞬でも「過去を忘れた」と言っても過言ではありません。

人が体験する現実というのは、多くの人が過去の記憶や経験をもとに『今』創造します。だから過去でできないことは、今もできないはず。しかし、何かで急激な変化が起きると、過去の記憶や経験との接点が微妙にかみ合わなくなり『今』、はじまったような現実になる。

過去との接点がズレているので、「記憶が曖昧になる」ということで現実を維持しようとするはたらきがあるようなんですね。

次の理由。それは、ヒーリングを受ける方にリラックスしてもらう効果があります。多くの病気の方は身体を動かさないせいか通常よりも呼吸が浅くなりがち。だから余計に身体の拘束が加速し、緊張を強めてしまう傾向にあるんですね。

それを、身体を動かしながら症状を確認してもらうことで、はじめての空間でも、いつものように振る舞え、さらには呼吸も深く入るようになります。ミツさんは、さり気ないところでも配慮をしながら空間をつくるのです。

6.ヒーラーとなる前から起きていたヒーリング現象

次の理由。実は、このときから始まっています。ヒーリングは、すでにこのときから始まっているんです。

ミツさんはもともと10年前にモンロー研究所のヘミシンクで自由に体外離脱ができるようになり、その後、透視能力やチャネリング能力が身についたという経緯があります。

いわゆるガイドやハイアーセルフ、過去世やパラレルリアリティの「その人」、もっと言えば潜在意識の声、異次元の存在の声…あらゆる「声」を必要に応じて届けるので、通常では知ることのできない情報まで知ることができます。

まずそこではじめたのはカウンセリングでした。ミツさんのカウンセリングを受けると、「自分の秘密を知る」「これからの動きが分かる」というメリットももちろんあるのですが、皆さんが「凄かった」という理由以上に多いのが「心が軽くなった」「スッキリした」「視界が明るくなったのが分かる」という身体的なもの、体性感覚的なもの。

ミツさんと話していると、なぜか落ち込んでいる人は表情が生き生きとしてきて、悩んでいる人の問題はすぐに解決し、ただの「いい話を聞いた」では終わらない不思議なことが次々と起きます。

それに加えて不妊症で悩む方が来ればまだこの世界には存在していない生まれてくる予定の子どもの声を届け、生まれてくるために必要な情報も聞いて伝えます。

今思えば、それはヒーリング。ヒーリングは病気を治すこともありますが、心の不調を改善する役割もあり、手はかざさなくても、同じような結果を生んでいたのかもしれません。実は、広い意味では10年前からヒーリングをしていたのです。

7.ヒーリングが引き出す、人の持つ治癒力

そして、最後の理由。これが最大なのですが、それは「今日すぐに改善するので、確認しておきましょう」という意味があります。確認してから、たった数十分後に同じ動作をすればそれはその日の体調でも気分でも、何でもありません。まさに、その数十分間のうちに起こった出来事なのです。

だからこの確認が起きるたびに、僕はこれからはじまる時間を一瞬も逃さずに見ようと、真剣そのものになるのでした。また、これはヒーラーの有能さを証明するわけではなく、その人の持つ治癒力を実証したようなもの。

実はヒーリング効果というのは、ヒーラーの能力云々はたった2割程度。実は、ヒーリング効果は「よくなってほしい」というヒーラーの意図と、「よくなりたい」という人間の心と身体が発動させる治癒力が協力したもの。そういう意味では、ヒーラーと言うのは「相手のやる気を出させる」という側面が強いんですね。

それもあってか、ミツさんは何度も言っていました。

「必ずよくなるので、絶対に諦めないでください」

そう安心を投げかけるように言うと、Yさんは笑顔で頷きました。後ろに座っていたお母様も見守った中でのはじまりだったのです。